生活保護を受けながら生命保険に入れる?保険を解約しない方法も解説

厚生労働省の資料によると、生活保護受給者数は令和3年11月現在で203万9,439人となっています。近年は減少傾向にあるものの、200万人以上の方が何らかの事情で経済的に困窮し、生活保護を受給しています。

生活保護の申請を検討している方の中には「生命保険に加入していても申請できるのか?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

結論、生命保険と生活保護は両立できず、生活保護を申請するにあたって生命保険の解約を求められるのが一般的な流れです。また、生活保護を受給中に保険金を受け取った場合も、生活保護の受給が停止となるケースが多いです。

こちらの記事では、生活保護と生命保険の関係や、解約せずに生活保護を受けられる方法などを解説します。生活保護の申請を検討中の方に役立つ内容となっているので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること
  • 生活保護受給者は、原則として生命保険に加入できない
  • 生命保険契約中に生活保護の申請をしたら解約を求められる
  • 保険料が安く、解約返戻金が低額もしくは解約返戻金がない保険は継続できる可能性がある
  • 生活保護受給中に保険金を受け取ったら、生活保護が打ち切りになる
  • 判断に迷うことがあればケースワーカーに相談することが大切
目次

原則として生活保護受給者は生命保険に加入できない

原則として、生活保護受給者は生命保険に加入できません。生活保護は、何らかの事情で経済的に困窮している方に対して、生活の援助を行う制度です。

生命保険の中には、貯蓄性を有するものがあります。もし生活保護受給者が生命保険に加入できると、国民から納められた税金が個人の蓄財につながってしまうため、生活保護受給者は生命保険の加入が認められません。

生活保護費は、4分の3を国が負担し、4分の1を自治体が負担しています。国と自治体が負担している分の原資は税金ですから、生活保護者が個人の蓄財につながる生命保険に加入すると、生活保護の趣旨にそぐわなくなってしまうのです。

しかし、貯蓄性を有しない「掛け捨て型保険」や解約返戻金が少額の保険であれば、生活保護を受給しながら契約できる可能性があります。

各自治体のケースワーカーによって判断が分かれるポイントなので、気になることがあれば自治体やケースワーカーに相談しましょう。

そもそも生活保護とは

生活保護とは、さまざまな理由で経済的に生活に困窮している人が、健康で文化的な最低限度の生活を送れるように保障するものです。

ただ単に経済的な援助を行うだけでなく、積極的に生活保護受給者が自立した生活ができるように援助することを目的としています。

以下で、生活保護制度の内容や趣旨について解説します。

生活保護の内容・趣旨

厚生労働省によると、生活保護制度は以下のような目的で設けられています。

生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。

厚生労働省

生活保護は、最低生活の保障と自立の助長を図ることを目的として、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行う制度です。

厚生労働省

生活保護は、生活保護法という法律に基づき、何らかの事情で生活に困窮している人が健康で文化的な最低限度の暮らしができるように保障する制度です。

厚生労働省

生活保護の申請は憲法で保障されており、生活保護を必要とする可能性は誰しもがあります。「最後のセーフティネット」と言われることもありますが、相談・申請窓口は居住地を管轄する福祉事務所の生活保護担当です。

生活保護の申請は個人単位ではなく世帯単位となっており、世帯全体で資産や能力などを活用しても健康で文化的な最低限度の暮らしが送れないときに、申請を検討することとなります。

生活保護を受給するためには要件を満たす必要があり、要件をクリアしたうえで「最低生活費から収入を差し引いた差額」を受給できる仕組みです。

最低生活費とは、健康で文化的な最低限度の生活をために必要な費用として、厚生労働省が定める金額です。詳細はこちらから確認できます。

なお、生活費の基準となる「生活扶助基準額」の例は下記のとおりです。(児童養育加算等を含む)

東京都区部等地方郡部等
3人世帯(33歳、29歳、4歳)164,860円145,870円
高齢者単身世帯(68歳)77,980円68,450円
高齢者夫婦世帯(68歳、65歳)122,460円108,720円
母子世帯(30歳、4歳、2歳)196,220円174,800円

参考:厚生労働省

最低生活費から「収入」は、就労の対価としての給料や報酬、社会保障給付が該当します。社会保障給付とは、年金や児童扶養手当などの公的制度に基づく給付です。

例えば、生活最低費が10万円、収入が2万円の場合は支給される生活保護費が8万円です。このように、生活保護では「まずは自分や親族で努力し、受給できる公的給付をできる限り活用する」ことが前提となっています。

生活保護を受給する条件

生活保護を受給するためには「自分が努力しても十分な資力や収入が得られず、親族の援助が受けられない状況」など、さまざまな条件をクリアする必要があります。

生活保護を受給するための条件
  • 保護の要件等:世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを活用する
  • 資産の活用:預貯金、生活に利用されていない土地・家屋等があれば売却して生活費に充てる
  • 能力の活用:働くことが可能な方は、その能力に応じて働くこと。年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、当該手当を活用する
  • 扶養義務者の扶養:親族等から援助を受けることができる場合は、援助を受ける

自助努力や親族の援助を受けても、収入が最低生活費に満たない場合は生活保護が適用されます。

なお、生活保護は生活を営む上で必要な各種費用に応じて、適切な扶助が支給されます。

生活を営む上で生じる費用扶助の種類支給内容
日常生活に必要な費用
(食費・被服費・光熱費等)
生活扶助食費等の個人的費用、光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出
家賃住宅扶助定められた範囲内で実費を支給
義務教育を受けるために必要な学費教育扶助定められた基準額を支給
医療サービスの費用医療扶助費用は直接医療機関へ支払う
(本人は負担しない)
介護サービスの費用介護扶助費用は直接介護事業者へ支払
(本人負担しない)
出産費用出産扶助定められた範囲内で実費を支給
就労に必要な技能の修得等にかかる費用生業扶助定められた範囲内で実費を支給
葬祭費用葬祭扶助定められた範囲内で実費を支給

資産状況や就労状況に応じて、支給される保護費が異なる点に留意しましょう。

生活保護を受ける人の義務

生活保護を受ける人は、下記の義務を果たさなければなりません。

生活保護を受ける人の義務
  • 保護を受ける権利は他人に譲り渡さない
  • 年齢や体力に応じて働くこと(働くことを目指す)
  • 支出を節約して、生活の維持と向上に努める
  • 家賃や学校に納めるべきお金を滞納しない
  • 収入を得た場合は必ず申告する
  • 年金を受給している場合は必ず申告する
  • 世帯の中で、転入や転出など異動があった場合は速やかに届け出る
  • 福祉事務所の指導や指示を必ず守る

参考:東京都福祉局

生活保護の財源は税金となっている関係から、生活保護受給者にはさまざまな義務が課されます。

義務を守れない場合は、当然のことながら生活保護の支給がストップします。事実を隠蔽した場合、詐欺罪などに問われる可能性もあるため、注意しましょう。

生活保護の手続きの流れ

生活保護の申請をするための手続きの流れは、下記の通りです。

生活保護申請の流れ

<1.事前の相談>

居住地の地域を所管する福祉事務所の生活保護担当窓口で、生活保護申請に関する事前の相談をする。生活福祉資金、各種社会保障施策等の活用について検討する。

<2.保護の申請>

  • 生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
  • 預貯金、保険、不動産等の資産調査
  • 扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
  • 年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
  • 就労の可能性の調査

上記の調査を行い、要件に該当している場合に、生活保護の申請を行う。

<3.保護費の支給>

厚生労働大臣が定める基準に基づく最低生活費から、給料や社会保障給付などの収入を引いた額を保護費として毎月支給する。生活保護の受給中は収入の状況を毎月申告し、世帯の実態に応じて福祉事務所のケースワーカーが訪問調査を行う。

生活保護の申請にあたって、原則として生活保護の申請書を福祉事務所に提出する必要がありますが、申請書がなくても申請することが可能です。

生活保護に関するよくある誤解
  • 必要な書類が揃っていなくても申請できる
  • 住むところがない人でも申請できる
  • 扶養義務者の扶養は保護に優先するが、同居していない親族に相談してからでないと申請できない、ということではない
  • 持ち家がある人でも申請できる(居住用の持ち家については、保有が認められる場合がある)
  • 通勤用の自動車を持ちながら求職する場合など、自動車を処分しないまま保護を受けることができる場合もある
  • 自営業のために必要な店舗・器具を、処分しないまま保護を受けることができる場合もある

必要書類がなくても相談・申請はできるため、困窮している方は生活保護の申請を検討してみてください。

生活保護を受給しながら生命保険に入れるケース

原則として、生活保護を受給しながら生命保険に加入することはできません。

しかし、生活保護者の生活を守る観点から、生活保護を受けながらも生命保険に加入できるケースがあります。

以下で、生活保護を受給しながら生命保険に入れるケースについて解説します。

生活保護を受給しながら生命保険に入れるケース

毎月の保険料が安い

毎月の保険料が安い生命保険であれば、生活保護を受けながら加入できるケースがあります。「安い保険料」の定義は自治体によって異なりますが、一般的には「支給される生活保護費の10~15%程度の保険料」が目安です。

高い生命保険料だと加入できない理由

高い保険料を支払う経済的余裕がある場合は、そのお金を「生活費に充てるべき」とケースワーカーから判断されるため。

生命保険は「契約者の万が一の事態」に備えるためのものです。契約者に「就労で稼げる潜在能力がある」場合に死亡してしまうと、遺族は生活に困ってしまうでしょう。

保険料が安い場合は、遺族の生活を守りつつも保護者の自立を促せるため、保険料が一定以下の場合は加入が認められます。

しかし、各自治体によって取り扱いは異なるため、事前にケースワーカーに確認することが欠かせません。

解約返戻金が低額である

解約返戻金が低額である保険や、解約返戻金がない掛け捨て型の保険であれば、生活保護を受けながら加入できる可能性があります。

基本的に、解約返戻金は「契約者の財産」であるため、生活保護を申請する前に「解約返戻金を生活費に充てるべき」と考えられるのが普通です。しかし、解約返戻金を受け取れる保険でも、条件次第では加入できる可能性があります。

生活保護を受けながら加入できる保険の例
  • 受け取れる解約返戻金が30万円以下
  • 受け取れる解約返戻金が「医療扶助を除く最低生活費の3ヶ月分以下」
  • 掛け捨て型など

上記のように、解約返戻金が低額の場合は生命保険に加入できる可能性があります。生活保護を受けながらでも、保護費をやりくりして貯金はできるため、一定額の解約返戻金であれば保険加入が認められています。

受け取れる解約返戻金が一定額以上である場合は、解約して生活費に充てるように求められることがあります。

ただし、各自治体によって基準が異なるため、申請にあたってケースワーカーに相談してみましょう。なお、解約返戻金を受け取った場合は、収入として申告しなければなりません。

被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

e-gov

申告を怠ると生活保護費の不正受給となるため、注意してください。

生命保険加入中に生活保護申請に至った場合

生命保険に加入している状況で生活保護を申請するに至った場合、加入している保険はどのようになるのでしょうか?

加入している保険の内容などによって対応が異なるため、不明点がある場合はケースワーカーに相談することが重要です。

以下で、生命保険加入中に生活保護申請に至った場合における、生命保険の取り扱いについて解説します。

終身保険は解約して解約返戻金を生活費に充てる

終身保険に契約している最中に生活保護の申請に至った場合、基本的に解約となります。終身保険には解約返戻金があるため、解約して得られた解約返戻金を生活費に充てることを求められます。

生活保護を申請すると、自治体は銀行や生命保険会社に対して資産調査を行い、預貯金や生命保険の契約状況をチェックします。

生活保護を受給するためには、保有している資産を最大限活用することが求められます。終身保険の解約返戻金も立派な資産ですから、生活保護の趣旨からして解約が求められるでしょう。

解約を求められる保険の例
  • 終身保険
  • 個人年金保険
  • 養老保険
  • 学資保険
  • 保険料が高い保険

上記のように、貯蓄性のある保険や資産形成に資するタイプの保険に加入している場合は、申請前に解約を求められるでしょう。

引き続き加入できるケースもある

生命保険加入中に生活保護の申請に至った場合でも、引き続き保険に加入できるケースもあります。

引き続き加入できる保険の例
  • 受け取れる解約返戻金が30万円以下
  • 受け取れる解約返戻金が医療扶助を除く最低生活費の3ヶ月分以下
  • 保険料が最低生活費の1割程度まで

そもそも貯蓄目的ではない掛け捨て型保険はもちろん、上記のように解約返戻金が少額の場合は解約せずに済む可能性があります。

自治体によって取り扱いが異なっており、保険契約が継続できるか、解約を要求されるかは各自治体の判断による点には留意しましょう。

生活保護受給者が被保険者である場合

生命保険に加入していても、生活保護受給者が被保険者である場合は、保険契約を継続できる可能性があります。

生活保護と生命保険の両立ができない理由は「税金を財源として、個人が資産形成をすること」を防ぐためです。

しかし、生活保護受給者が被保険者で、保険料を負担している契約者が生活保護受給者でない場合は、生活保護受給者の資産形成につながりません。

生命保険の登場人物
  • 契約者保険会社と保険契約を結ひ、保険料を支払う人
  • 被保険者:保険の対象になる人
  • 保険金受取金::被保険者が保険支払事由に該当したとき、保険金を受け取る人

ただし、保険料を支払う契約者が親族の場合は「生活保護申請者への援助をすることが妥当」と判断されることがあります。

生活保護受給者を被保険者としている場合、関係が疎遠ではないと考えられることから、ケースワーカーから指導が入る可能性は高いでしょう。

契約者変更をする場合

生命保険は、契約後に名義変更ができます。生命保険に加入しつつも、契約者変更をする場合も保険を継続できる可能性があります。

例えば「一時的に生活が苦しくなるため、生活保護を受給したい」というケースです。この場合、本人の自立をサポートするためにも、保険を継続した方が理に適っています。

一時的に生活が苦しくなる例
  • 長期入院
  • まとまった税金を納付する
  • 一時的な失業

一時的に生活が苦しくなるやむを得ない期間だけ、保険の契約者を本人以外に名義変更することで、保険を継続しながら生活保護を受給できる事例は存在します。

生活保護の申請は世帯単位で行うため、契約者を変更する場合は、同一世帯以外の(祖父母など)にしましょう。

自治体やケースワーカーの判断に委ねられるものの、もし一時的な生活保護の受給できれば済みそうな場合、契約者の変更で保険を継続できるか相談してみてください。

生活保護受給中に保険金を受け取ったら

生活保護受給者が死亡保険金を受け取った場合、生活保護の支給に影響が出ます。保険金は収入として申告しなければならず、保険金額が多額であれば、生活保護の支給要件から逸脱するためです。

もし生活保護受給中に保険金を受け取ったら、保険金を受け取った旨を申告するのはもちろん、ケースワーカーからの指示に従うことが大切です。

生活保護費の返還が必要になる

生活保護受給中に保険金を受け取ったら、生活保護費の返還が必要となります。

例えば、保険契約者と被保険者が生活保護受給者の親で、保険金受取人が生活保護受給者の場合が該当します。

生活保護受給者の親が上記の生命保険に加入している場合、親が死亡したら生活保護受給者に保険金が支払われます。

死亡保険金は「受取人固有の財産」とされているため、生活保護受給者が保険金を受け取ったら収入としてケースワーカーに申告しなければなりません。

もし生活保護費を受け取った月に保険金も受け取った場合、当該月の生活保護費は返還する必要があります。

保険金を受け取ることで「生活保護を受ける必要がなくなる」ことから、返還を求められたら速やかに応じることが大切です。

生活保護が打ち切りになる

一般的に、死亡保険金は数百万円から数千万円になることから、保険金を受け取ると生活保護の受給要件を満たさなくなります。

保険金の受け取りによって生活保護が廃止になるケース

資産を得たことで生活保護の条件を満たさなくなった。

生活保護は、保有している資産を活用してもなお、健康で文化的な最低限度の生活を送れないときに支給されるものです。

保険金を受け取ると「保護を必要としなくなったとき」に該当し、保険金を受け取ったら生活保護が受給停止または廃止となる可能性が高いでしょう。

生活保護の受給者は、すべての世帯員の収入や資産状況の報告が義務付けられています。保険金を受け取った旨も届け出る必要があり、担当のケースワーカーに報告しなければなりません。

もし保険金を受け取ったことを申告しなかった場合、生活保護の不正受給と見なされます。裁判に発展し、刑罰や罰則対象となるケースもあるため、注意しましょう。

申告しないと生活保護の不正受給になる 

保険金や解約返戻金を受け取った旨をケースワーカーに申告しないと、生活保護の不正受給に該当します。

保険金などの収入を得たら、ケースワーカーに申告しなければなりません。

生活保護を不正受給すると、生活保護が廃止されるのはもちろん、ペナルティとして受給額の返還を命じられます。

自治体やケースワーカーは定期的に生活保護受給者の実態調査を行っており、保険金などの収入を得た事実はすぐに発覚します。

悪質な不正受給とみなされると、詐欺罪などに問われ刑法による罰則が適用されることもあるため、注意しましょう。

死亡保険金の受け取りを拒否しても不正受給になる

死亡保険金を受け取れるにも関わらず、死亡保険金の受け取りを拒否すると生活保護費の不正受給になります。

保険金や解約返戻金の受け取りを辞退したとしても「本来受け取れるべき資産を活用して生活を立て直す」という、生活保護の趣旨は変わりません。

保険金の支払事由に該当したときは、ケースワーカーから解約を求められ、受け取った保険金で生活を立て直すように指導されます。収入を得たら、

「生活保護費が減らされるから」という理由から、保険金の受け取りを拒否するのは、生活保護の趣旨に反してしまいます。

自治体やケースワーカーは生活保護者の保険契約状況を調査しているため、隠そうとしても隠し通すことはできません。

生活保護受給者は原則として相続放棄が認められない

生活保護受給者が相続人となる相続が発生したときは、原則として相続放棄は認められません。

相続の方法
  • 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する
  • 限定承認:プラスの財産とマイナスの財産があるとき、プラスになるときだけ相続する
  • 相続放棄:プラスの財産もマイナスの財産も含めて相続しない

相続して資産を取得すると、生活保護の受給停止や廃止となる可能性があります。生活保護の受給を継続するために相続放棄を検討する方がいますが、生活保護の趣旨から認められないケースがほとんどです。

相続で資産を得られる見込みがあったにもかかわらず相続放棄すると「資産の活用」を放棄したことになるため、いずれにしても生活保護が廃止となることがあります。

生活保護は「利用できる資産がある場合は利用すること」が前提となっているため、生活保護を受けたいがために相続を放棄することは認められません。

ただし、被相続人が多くの負債を抱えており、相続人がプラスの財産を相続できる見込みがない場合は、相続放棄が認められます。

生活保護と生命保険の関係についてよくある質問

以下では、生活保護と生命保険の関係についてよくある質問へ回答します。

生活保護と生命保険の関係についてよくある質問
  • 生活保護を申請するときに生命保険の加入を黙っているとバレる?
  • 生活保護受給中、守るべきルールは?
  • 生活保護を申請すると、家族にバレる? 
  • 生活保護を受けていると、医療保険に入れない?
  • 生命保険料を親が払う場合、生活保護を受けられない?
  • 生活保護を受けていると、生命保険の解約返戻金は受け取れない?
生活保護を申請するときに生命保険の加入を黙っているとバレる?

生活保護を申請するときに、生命保険の加入を隠してもバレます。

自治体は、生活保護の審査を厳格に行っており、金融機関や保険会社に照会を行っているためです。

「どうせバレない」と思っても、保険に加入している事実は簡単にバレてしまいます。

生活保護受給中、守るべきルールは?

生活保護を受給するためには、守るべきルールがいくつかあります。

生活保護受給中に守るべきルール
  • 利用できる財産や資力を生活のために活用する
  • 能力に応じて働く
  • 収入、支出その他生計の状況を適切に把握する
  • 支出の節約を図り、生活の維持・向上に努める
  • 福祉事務所からの保護の目的達成に必要な指導又は指示に従う
  • ケースワーカーによる生活に関する指導に従う
  • 生活保護の受給中は、収入の状況を毎月申告する

生活保護の財源は公金である以上、厳格な審査や指導が行われます。指導に従わないと保護が停止となることもあるため、注意が必要です。

生活保護を申請すると、家族にバレる? 

生活保護を申請すると、基本的には家族にバレます。生活保護の支給可否を審査するにあたって、まずは扶養者がいないか調査するためです。

家族がおり、経済的な援助を受けられそうであれば、まずは家族から援助を受けるように指導されます。

そのため、家族に内緒で生活保護の手続きを進めることはできません。

生活保護を受けていると、医療保険に入れない?

生活保護を受けていると、医療保険に入れないケースが一般的です。保険を解約して、保険料を生活費に充てるように指導されるでしょう。

ただし、生活保護受給者に対しては、医療扶助としての医療費が支給されます。

医療費は全額支給されるため、医療保険に入れないことで不利益を被ることはありません。

生命保険料を親が払う場合、生活保護を受けられない?

本人に代わって生命保険料を親が払う場合、基本的に生活保護は受けられません。

本来、保険料は契約者が払うべきものですが、親が払う場合は「経済的に援助」していることになります。経済的な援助が受けられるのであれば「生活保護を申請する前に、親族間で助け合う」のが筋です。

そのため、生命保険料を親が払う場合も、生活保護は受けられないでしょう。

生活保護を受けていると、生命保険の解約返戻金は受け取れない?

そもそも、解約返戻金がある生命保険に加入していると、生活保護を受給できません。

解約返戻金が低額の生命保険の場合、生命保険と生活保護を両立させられる可能性があります。生活保護を受けつつも解約返戻金を受け取った場合、解約返戻金相当の生活保護費を返還する必要があります。

つまり「解約返戻金は受け取れるものの、その分生活保護費がカットされる」ため、結果的に解約返戻金が受け取れなかったケースと同じです。

原則として生活保護と生命保険は両立できない

原則として、生活保護と生命保険は両立できません。生命保険に加入している状態なら生活保護を申請できず、契約を求められるでしょう。

ただし、例外として下記の保険であれば、生活保護と両立できる可能性があります。

生活保護と両立できる可能性がある保険
  • 毎月の保険料が安い
  • 解約返戻金が低額である
  • 掛け捨て型保険

判断に迷う場合は、福祉事務所やケースワーカーに相談し、指示に従うことが大切です。

生命保険に加入している事実を隠蔽したり、虚偽申告したりすると不正受給にあたり、処分を受ける可能性があるため注意しましょう。

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